このWeb CMで印象に残ったのは、警備員に見つかりそうな場面でBGMが止まるところだった。派手な効果を足しているわけではないのに、急に緊張する。何が起きているのか、音の役割を分けて考えてみた。
BGM停止による場面の切り替え
一定のビートが続くと、観客は次のカットや動きを無意識に予測する。音楽が止まるとその予測が中断され、画面内の出来事へ注意が向く。
BGMが鳴る部分では運動と解放感が強調され、停止後は侵入、監視、発見の危険が強調される。同じ場所と人物でも、前景化する音を変えることで場面の意味を切り替えられる。
CORE NOTEBGMを止めることで、観客の注意を環境音へ移している。
主人公と観客の耳を一致させる。
誰かに見つかる危険があるとき、足音、衣擦れ、扉、床の反響は背景ではなく情報になる。BGMを引いて現実音を前へ出すと、観客も主人公と同じように周囲へ耳を澄ます。
これは説明台詞を使わない聴覚的なPOVだ。カメラが主観映像にならなくても、何を聞かせるかによって観客の注意を人物の内側へ移せる。
編集では、無音の前後まで設計する。
止める前
危険の直前でBGMの帯域や音量をわずかに落とし、耳が変化を察知する助走をつくる。急停止が効く素材なら、あえて予告を消す。
止めた後
完全なデジタル無音にせず、ルームトーン、遠い反響、呼吸を残す。空白をつくるのではなく、聞く対象を交換する。
戻す瞬間
着地、視線、カット、危険からの離脱など、映像上の明確な点へBGMの復帰を合わせる。停止は再開の快感まで含めて一つの演出になる。
- 撮影時に足音、服、扉、呼吸、空調を別録りする
- BGMなしで現実音だけの編集を一度成立させる
- 音量よりも、何が主役かの交代を明確にする
作品情報の扱いについて。
作品はヤマダケイゴ名義のVimeoアカウントとショーリールで公開されている。ただし、公開ページ内に詳細なスタッフクレジットはなく、本人の本作での正式な役職は未確認。投稿者であることと監督であることは分けて扱った。
ここで書いた音響意図は制作者の公式解説ではなく、映像と音から行った観察と解釈である。
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